平成26年5月

前回の朝礼で、「挨拶の励行」と、それに関連して「校門での礼」について話をしました。「挨拶の励行」は君たちの4つの実践目標の1つであり、他に「正しい服装」、「10分前登校」、「清掃整頓」があります。

道元禅師は「身の威儀を改むれば、心も随って転ずるなり」(行住坐臥、作法にしたがって身の姿勢を端正に整えていると、心もそれにつれておのずから改まっ て正しくなる)と説かれています。「形」から入って「心」を究めるということです。同じように、「挨拶の励行」、「正しい服装」、「10分前登校」、「清 掃整頓」も、まずその「形」をしっかりと整えることです。
気持ちのよい挨拶を交わせば、お互いを尊重しあう心が育まれます。時間に余裕をもって行動すれば、自らの心の脚下を見つめる余裕が生まれます。服装を整え、環境を整えれば、「今、ここ」に臨む心の構えが整ってきます。

4つの実践目標は、いつかやっとたどり着けるような特別な目標ではありません。すべて当たり前のことです。眼横鼻直──目は横、鼻は縦に真っ直ぐに当たり 前について、当たり前にその役割を果たしてくれています。私たちも、当たり前のことを当たり前に行うということが大切です。ところが、いつでもそれができ るかと言うと、決してそうとは限りません。自分自身を点検してみてください。
登校する集団の中にまぎれて「おはようございます」を省略したり、時間ギリギリに登校したりしていないでしょうか。ホックやボタンを外したり、Yシャツの裾を出したりしていないでしょうか。ゴミを放置したり、ロッカーを開けっ放しにしたりしていないでしょうか。
当たり前であるはずの「形」をおろそかにしてしまうところがあるのなら、その背景には、「このくらいいいや」という気持ちがあります。それはどんどん増殖 していく性質をもっていて、やがて君たちを麻痺させていきます。しかし、「このくらいいいや」と思ってやらないでいることをやるかやらないかというのは、 実は僅かな差でしかありません。イチロー選手が「小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただ一つの道だ」と言っていますが、僅かな差なら やるのです。その差をそのままにしないことです。僅かな差をおろそかにすることを習慣にしていると、心に隙ができて、あと一歩で手の届くはずのものに手が 届かなくなります。

4つの実践目標は学園が定めたものであって、君たち自身が定めたものではありません。しかし、人間として自覚を求め る生活のため、君たちがつくるべき「形」の基本、君たちの人間力の基礎となる大切なものです。基礎、基本ができていると、いざというとき、崩れない人間と なります。そして、周囲から信頼される人間となります。
「挨拶の励行」、「正しい服装」、「10分前登校」、「清掃整頓」──君たちはこの4つの実践目標を、「やれ」で実践させられるのではなく、自ら「やる」で実践をしてください。