平成27年6月

 今年度はじめての定期試験、Ⅰ期中間試験が終わりました。君たちの中には、はやく答案を返してもらいたいという人もいれば、できれば返してもらいたくないという複雑な心境の人もいると思います。

 君たちがやがて描く大きな「明日」を実現するには、目の前にある小さな「明日」を一つひとつ実現していく必要があります。頑張らなければクリアできないけれども、頑張ればクリアできる、そういうところに目標を設定する。努力してそれをクリアできたら次の目標を立てる。そうやって一つひとつ目標をクリアしていくところに、自分を成長させていくことの「楽しさ」があります。

 はやく答案を返してもらいたいという人は、一つその「楽しさ」を味わえたのではないかと思います。そして、自信を深めることもできたのではないかと思います。ただし、自信と油断は紙一重です。兜の緒を締めて、次の目標への努力を始めてください。

 努力したのに、目標をクリアできなかったという人もいるかもしれません。しかし、その努力は無駄にはなりません。原因を出題のタイプや難易度といった自分の外に求めるのではなく、自分の中に求めれば、努力の中身を改善することができます。それまでの努力があってこその改善です。

 もし、努力を怠っていたという人がいるなら、自分を変えるのは、「今、ここ」しかありません。過去を変えることはできないし、いつか頑張ろうでは、いつかはずるずると先延ばしになります。ただし、「今、ここ」をただ「頑張ろう」と思うだけではなかなか頑張れません。頑張る内容、自分は何をどう実践するのか、具体的な行動目標を決めることが必要です。自分の行動について自分自身と具体的で明確な約束をするということです。その約束を守りとおすことができたなら、自分を信頼することもできるようになります。

 道元禅師が中国の天童山景徳寺で修行をしていたときのことです。お寺の台所を預かるかなり年配の老僧が、夏の暑い庭で、汗だくになりながら椎茸を干していました。道元禅師が見かねて、どうして若い人にやらせないのかと尋ねると、老僧から返ってきたのは、「他は是れ吾に非ず(他人にやらせたら自分がやったことにはならない)」という答えでした。そこで、それならばもう少し涼しくなってからにしてはどうかと言うと、今度は「更にれのをか待たん(今やらないでいつやると言うのか)」と返されてしまったといいます。

 できない理由、やらない理由というのは、探せばいくらでも出てきます。しかし、自分との約束を果たすことができるのは他の誰でもありません。自分だけです。歳月は人を待ってはくれません。今日やることを明日に先延ばしにしていたら、結局何もしないままになってしまいます。

 「明日」という字は「明るい日」と書きます。「明日をみつめて、今をひたすらに」、自らの意志と行動で、「明るい明日」を切り拓いてください。(朝礼でのお話から)