入試講評

平成27年度 中学入試講評

国語

国語1次 正答率・講評

問題 正答率(%)
受験者 合格者
完全 部分 完全 部分
【一】 問一 40.4 50.7 54.3 40.2
問二 31.9 0.0 37.0 0.0
問三 31.9 7.5 40.2 6.5
問四 56.3 0.0 69.6 0.0
問五 60.1 0.0 70.7 0.0
問六 73.7 0.0 82.6 0.0
問七 27.7 4.7 35.9 2.2
問八 61.0 33.3 65.2 31.5
問九 6.6 56.8 8.7 67.4
問十 5.2 30.5 6.5 30.4
【二】 問一 67.6 32.3 70.6 29.3
問二 1.4 72.3 2.1 80.4
問三 54.4 38.0 60.8 33.6
問四 37.5 0.0 52.1 0.0
問五 39.4 0.0 42.3 0.0
問六 41.3 0.0 46.7 0.0
問七 9.8 59.1 18.4 60.8
問八 8.4 15.0 23.9 35.8
問九 13.6 0.0 19.5 0.0
【三】 漢字 12.0 88.0 21.0 79.0
【一】
出典は、斉木香津『踏んでもいい女』による。戦時中の貧しい生活の中、物々交換にまつわる前後半の話を通して、主人公の心の動きをつかむ設問とした。
初めての物々交換で石鹸の価値を知ったときの主人公の驚きに関して説明できることと、祖父が同情心から困っている人を助けたことへ主人公が好感を持った過程を説明できることが読解のポイントとなる。特に記述の問九、問十では、上記のポイントを中心に解答をまとめる必要がある。
問九では、「衝撃」という語の説明はよくできていたが、「解放」が初めての物々交換における「緊張」と結びついていることに気付いた解答は少なかった。
問十では、祖父の虎吉が行った行為への自己嫌悪と主人公真砂代に対する申し訳なさを真砂代がどのように捉えたのかを踏まえて、虎吉の微笑んだ理由と関連させて考える必要があるが、虎吉の受け止め方まで言及した解答は少なかった。
【二】
出典は、鷲田清一『わかりやすいはわかりにくい?―臨床哲学講座』による。一つの問題に対する正解は一つしかないという一般的な考えを指摘したうえで、問いと答えの関係性は必ずしも一通りではないということや、分からないものを自己の論理で捉え直そうとし続けることの必要性を述べている。ただし、設問の関係上、結論部分は省略した。与えられた問題に対して一つの正解を出すということを繰り返してきた受験生に、「分かる」ということについて考えてもらいたいと考え、この本文を選択した。
問八は、省略された本文の結論部を、それまでの文脈から考える問題であった。Aは本文の前半部分・Bは後半部分の内容に関わる内容である。答えとなる要素を理解できているように見受けられる解答は多かったが、それを空欄前後の文に沿って書き換えることができている解答は少なかった。
問九は、本文の構造を把握できているかを問う問題であった。記号問題であったのだが、正答率は二割を切っている。本文の意味内容を理解しようとするだけではなく、一つ一つの段落が本文の中でどのような役割を担っているかを考える習慣を身に付けたい。
【三】
③「豊漁」の「漁」を「量」に、⑧「非難」の「非」を「批」に、⑨「栄養価」の「価」を他の字と間違えている答案が目立った。「ハネ」「トメ」などの不備による不正解の答案は少なかった。

国語2次 正答率・講評

問題 正答率(%)
受験者 合格者
完全 部分 完全 部分
【一】 問一 3.2 0.0 3.7 0.0
問二 61.9 38.1 62.8 37.2
問三 77.5 0.0 84.4 0.0
問四 35.1 35.9 40.5 37.5
問五 55.0 7.1 61.5 5.6
問六 6.3 87.7 8.0 87.0
問七 57.4 0.0 64.5 0.0
問八 0.9 86.1 1.3 91.0
問九 53.7 0.0 58.8 0.0
問十 2.2 59.1 2.3 63.5
【二】 問一 30.5 48.1 32.9 48.2
問二 53.5 37.0 60.1 34.6
問三 77.7 0.0 82.7 0.0
問四 51.7 0.0 58.8 0.0
問五 29.9 0.0 35.2 0.0
問六 30.3 0.0 36.9 0.0
問七 3.2 47.0 3.7 51.8
問八 0.4 61.0 0.7 69.1
問九 23.4 54.5 27.6 56.8
【三】 漢字 28.0 71.4 35.9 93.5
【一】
出典は、仁木英之の『僕僕先生』による。作品では、主人公の王弁が、父の使いにより黄土山の仙人のもとに行き、自らを僕僕先生と名乗る仙人に出会って様々な仙術を見せられるうちに弟子入りしていくという話だが、その使いに行く経過を描いた部分が本文である。本文における登場人物は王滔と王弁の親子二人だけであるが、お互いのやり取りを踏まえつつ、本文の表現から考えられる心情の変化を正確に読み取らなければならない。
国も時代も異なる設定の話で、小学生には読みづらい部分もあったかもしれないが、話の中では大人である主人公の王弁を自分たちと同年代として単なる親子関係の話で読みかえてしまえば、話の構造そのものは捉えやすいし、心情理解も容易になったはずである。
正答率は部分解答も入れれば概ね6割を超えており、全体的には良くできていたが、やはり記述問題に関しては完全な解答は少なかった。問6では、なぜ「気のない」なのかと、なぜ「相槌を打つ」のかから分かることを、問8では、いつもと違う父の発言と、その不可解さによって心配が生じていることを、問10では、王弁への期待と王滔自身の願望とを、それぞれ解答する必要がある。完璧な解答でなくても部分点を重ねて合格を勝ち取ることはできるので、分かっている範囲で解答することは大切であるが、解答すべきポイントがどこにあるのかを考えることで、解答を完全に近づけることもまた事実なので、普段からそのような練習を積み重ねて欲しい。
【二】
出典は、文芸評論家・清水良典の『あらゆる小説は模倣である。』による。現在、私たちが優れた文学などの芸術作品に対し、才能ある作者が天からの啓示を受けて創作を行うというようなイメージは、19世紀のロマン主義に端を発するものであるということ、また村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』の創作プロセスを取り上げ、創作とは往々にして過去の先行作品からヒントを得てなされていることを述べた内容である。昨年は盗作問題が世間で大きな話題を集め、近年は大学で学生のレポートのコピペ問題なども取り上げられることがある。パクリ/引用の境、オリジナリティーという問題に対して考えるきっかけになってほしいというのが、本文選択の意図である。
小学校6年生にとっては、ロマン主義は馴染みのない話題だったろうが、おおむね本文の内容は取れていたように見受けられた。全ての問題で合格者平均が全体の平均を上回っており、丁寧な読解の重要性を感じさせる結果となった。問五、創作行為が19世紀は一部の人々の特権的営為だったのに対して、現代においてはさまざまな人々がそれを行うことが可能になった理由を答える問題。傍線部の7行前に、かつては社会構造が庶民階級と富裕階級にはっきりと分かれていたことについての記述があるので、そこが根拠となる。問六はオの誤答が多かったが、「固有の物語観」が言い過ぎ。本文にはあくまで創作や文体のスタイルについてとしか書いていない。問九の選択肢キの間違いも多かった。イ・エは事実レヴェルで本文の記述と一致するので、キは不正解である。道徳的な内容の選択肢に惑
わされないようにしたい。また、記述問題については抜き書きではなく、言い換えや複数の箇所をまとめる能力が求められる。そのような内容の問題集を用いて対策してほしい。
【三】
全体としては、よくできていた。③「枚挙」、④「裁(き)」はほとんど正解だった。①「蒸留」の「蒸」は、文字としておかしなものも見受けられた。また⑤「買収」は「売収」「買取」といった誤答が目立った。

国語3次 正答率・講評

問題 正答率(%)
受験者 合格者
完全 部分 完全 部分
【一】 問一 32.1 62.3 38.5 58.3
問二 76.9 0.0 80.2 0.0
問三 83.0 0.0 90.6 0.0
問四 42.9 54.7 43.8 56.3
問五 0.0 38.2 1.0 50.0
問六 36.3 0.0 47.9 0.0
問七 28.3 0.0 28.1 0.0
問八 84.9 0.0 89.6 0.0
問九 0.0 61.8 0.0 76.0
問十 10.4 64.6 15.6 68.8
問十一 9.0 69.8 14.6 71.9
【二】 問一 27.0 66.0 34.0 63.0
問二 88.0 0.0 91.0 0.0
問三 35.0 47.0 46.0 46.0
問四 6.0 76.0 9.0 78.0
問五 33.0 6.0 50.0 5.0
問六 4.0 27.0 5.0 36.0
問七 3.0 61.0 5.0 70.0
問八 38.0 0.0 44.0 0.0
問九 0.0 10.0 0.0 16.0
【三】 漢字 13.2 85.4 20.8 79.2
【一】
本文は森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』(角川書店)によった。
問題文はⅠ・Ⅱの二つのパートで構成されている。
Ⅰは、死の概念を始めて知った「ぼく」の妹が不安のあまり泣き続けている場面から始まる。いくらなだめても納得しない妹の様子を見た「ぼく」は、自分が初めて死というものを知った時のことを思い出しながらも、どうすることもできずにいる。やがて留守にしていた母親が帰宅し、家の中にあたたかい雰囲気が戻ってくることで「ぼくと妹が味わっていた不安な気持ちは、急に雪が溶けるみたいに消えていく。
Ⅱは、「ぼく」が友人のウチダ君にⅠでの出来事を話すところから始まる。ウチダ君は「ぼく」の妹の気持ちは「よくわかる」といいながらも、やがて自分が死について考えを深める中で発見した「ふしぎなこと」について、おずおずと語り出す。そこで語られたのは「ぼくらは誰も死なない」という驚くべき仮説だった。ウチダ君は言葉をつくして、なんとか自分の仮説を「ぼく」に伝えようとし、「ぼく」もまた必死にそれを理解しようと努める。やがて「ぼく」とウチダ君は、「ぼくらはだれも死なない」という「研究」の成果を共有することによって、死の恐怖から解放される。ひたすら感心する「ぼく」を前にして、なんとか説明を終えたウチダ君は「まるで重い荷物をおろしたみたいに、うれしそうに笑」うのだった。
会話を中心に構成された本文は一見読みやすいが、内容は高度に抽象的である。なんとなく読み流していては、Ⅱの文章を反映した問五以降の問題はほぼ解答不可能であったはずである。たとえば問七では、本文に反復される「こっちの世界」という言葉の意味内容を文脈から推測する力が問われていたが、正答率は3割を下回った(選択肢問題)。感覚ではなく、論理を重視した読解を心がけてほしい。また、問八の記述問題も複数ある解答根拠をすべて満たしたものはみられず、ピンポイントで部分を拾い上げているものがほとんどであった。
総合的に見て、本文を丁寧に整理しながら読めたかどうかで大きく差がついたといえるだろう。
【二】
近代の直線的な時間と伝統社会の円環運動をする時間について書かれた文章。上野村の農民の伝統的な生き方と村から都会に出て近代社会の中で生きる人々の生活とを対比させることによって、それぞれの時間のもつ特性を具体的に論じている。二つの時間の中で、筆者は永遠に回帰する時間に心を寄せている。回帰する時間は人間存在と密接に結びついていることから、人間に優しい時間であると考えるからである。
【一】に時間をかけてしまい、【二】まで時間がまわらず、じっくりと論述問題に取り組めなかった受験生もいたようだ。問四 箇所要約 「回帰する村の暮らし」を具体的にまとめることがポイント問七都市の住民と村の住民との生き方の対比を論じる問題。「わかりやすく説明する」とあるので、具体例を入れて説明することがポイント。「淋しさ」の原因は「人生が停滞しているように感じられる」からであるが、ここまで答えられた答案は少なかった。問九「回帰する季節―労働―人間存在」の関係について論じる問題。本文そのままの抜き出しで終わっている答案が目立った。
【三】
目立った誤答として、③「構じる」、④「望む」、⑤「見当」「険討」、⑦「展型」「典形」、⑧「配借」などがあった。的確な漢字の使い分けができるようにしっかり練習することが望まれる。