入試講評

平成26年度 中学入試講評

国語

国語1次 正答率・講評

問題 正答率(%)
受験者 合格者
完全 部分 完全 部分
【一】 問一 95.0 5.0 96.7 3.3
問二 25.2 70.2 22.0 75.8
問三 34.9 0.0 42.9 0.0
問四 13.8 83.5 17.6 81.3
問五 8.3 83.9 9.9 86.8
問六 82.6 0.0 90.1 0.0
問七 30.7 0.0 35.2 0.0
問八 72.9 0.0 79.1 0.0
問九 20.6 68.8 23.1 70.3
【二】 問一 96.3 3.7 97.8 2.2
問二 39.4 56.9 54.9 42.9
問三 34.9 45.9 41.8 47.3
問四 27.5 0.0 27.5 0.0
問五 11.0 37.6 16.5 44.0
問六 46.8 1.4 60.4 2.2
問七 35.3 0.0 44.0 0.0
問八 25.7 0.0 36.3 0.0
問九 0.0 43.6 0.0 46.2
【三】 漢字 6.0 93.6 5.5 94.5
【一】
本文は重松清の『プラネタリウム』によった。ステッツカー欲しさに子供天文教室の講
習会に参加した小学五年生の少年が、同い年の少女と出会う。二人で星座盤の操作をしているうちに、偶然誕生日が同じであることを知り、運命的なつながりを感じて少女に惹かれてゆく。そして何とか親密な関係を結びたいと考える。少年の妄想は膨らんでゆき、一生懸命彼女に話しかけるが、当然会話は、噛み合わない。最後は何事もなく二人は別々に帰って行く。
問二の語句の意味を答える問題は完全解答できた人は少なかった。「肩をすぼめる」の意味がとりにくかったようだ。問四の少年の心情の変化を説明する設問も、完全解答できた生徒は少なかった。問五の「少年ががっかりした」理由説明も苦労した人が多かったようだ。問七の一人相撲の解答も同様である。問九は最後の文章と本文全体から、今後の二人の未来像を二つ類推する問題であった。類推の妥当性に重きが置かれており、方向性は一つだとは限らない。
【二】
本文は広中平祐『生きること 学ぶこと』によった。人間の脳をコンピューターと比較してその特性について考え、学ぶことで得られる知恵が人生の中で重要なものであることを明らかにし、それ故に人間は学ばなければならないことを主張した文章である。
問二・問六の比較的易しい問題で受験者と合格者との正答率に大きな差が出ており、確実に正解できる力が大切なことが分かる。問四で人間の脳の特性について、問五で人間の脳の「ゆとり」について整理し、問六・問七で人間の脳の「寛容性」について考え、問八・問九で筆者の主張に迫るように設問した。問八・問九では読解の幅が小さく、傍線部付近だけの読みになってしまったために正解にたどり着けない解答が目立った。難解な文章ではないはずなので、キーワードに着目しながら、その関係性を正確に読み解いていけば得点できたと思われる。感覚ではなく、論理性を重視して読解できる力をつけていって欲しい。
【三】
概ねよく出来ていたが、完答できた受験生は少なかった。わけても、⑤「恩義(恩誼)」⑥「師事」の書き間違いが多く見受けられた。日頃から積極的に読書に取り組み、語彙力をつけてほしい。

国語2次 正答率・講評

問題 正答率(%)
受験者 合格者
完全 部分 完全 部分
【一】 問一 92.7 7.3 94.4 5.6
問二 93.9 3.6 96.1 2.6
問三 75.5 0.0 80.1 0.0
問四 78.0 0.0 83.0 0.0
問五 0.7 78.2 1.0 85.0
問六 83.4 0.0 87.6 0.0
問七 46.9 45.8 53.3 38.9
問八 3.6 73.7 4.9 75.5
問九 4.7 56.5 6.5 66.3
問十 3.4 36.7 5.2 47.1
【二】 問一 28.4 54.4 33.7 53.3
問二 79.6 0.0 87.9 0.0
問三 32.4 56.9 38.2 54.6
問四 88.9 0.0 92.5 0.0
問五 53.3 0.0 60.1 0.0
問六 70.5 3.6 76.8 3.9
問七 30.8 0.0 31.7 0.0
問八 27.0 0.4 31.7 0.7
問九 1.3 52.8 1.6 64.4
問十 4.7 69.6 5.6 74.2
【三】 漢字 24.7 73.9 33.7 65.4
【一】
出典は、荻原浩『愛しの座敷わらし』による。東京から田舎に引っ越してきた家族が、古い民家に住みついている「座敷わらし」との交流を通し、心の成長をしていく物語である。
出題箇所は、物語後半、長女梓美がクラスメートたちとどのように関わるかを決心する場面である。「周囲の顔色ばかりを窺って生きていた」梓美が、「自分らしく振舞う」ようになった過程を、「座敷わらし」の存在と絡めて読むことがポイントとなる。
「ガンコ」たちと仲良くなることができた結果を長い文章の中で摑まなくてはならないので、問九・問十の完答率はやや低くなった。特に、梓美の「変化」=「友達ができる」と表面的な部分で抑えてしまった解答が目立った。梓美が座敷わらしに「ありがとう」の言葉を発した理由を文章全体から深く読み取り、解答をまとめる必要がある。
【二】
出典は、隈研吾『小さな建築』による。世界的に活躍する建築家である著者が、3.11後に建築の進むべき姿について考察した一冊。出題箇所は本文の冒頭近くの部分である。近代以降、人々が依存してきた巨大なシステムとしての「大きな建築」が、東日本大震災でその脆弱さを露呈したことを批判した上で、国家などに頼ることなく世界と人間をつなぐことのできるような「小さな建築」を提案する。その際、自分たちで扱うことのできる「小さな単位」をベースにするというアイディアを、中華料理を例に挙げて説明している。
正答率は各問ともほぼ予想通りであった。全体として見ると、後半に行くに従って正答率が下がっており、問七、十などは選択肢の微妙な差異を検討しないと正解にたどり着けなかったと思われる。その際に、本文に書かれていることとの照らし合わせだけでなく、二択で迷ったときに「どちらの選択肢が正解なのか?」を俯瞰的に考えられる視点が必要。問七、料理が建築を考える上で参考になるのは、単に共通項を持っているからではなく、材料のモジュール化によって建築にも応用できる(=人にとって心地よい空間を作り出せる)からである。問十の選択肢ウは、「個人化」・「民主化」という語句で誤答と判断した受験生が多かったようだが、パソコンの個人への普及は、誰でも情報にアクセスすることができるようになったという意味で民主化と言える。記述の問九は、本文の表現をわかりやすく言い換えられるかどうかで差がついた。単なる本文引用のパッチワークという表面的なテクニックでなく、しっかりした内容理解を行った上での解答作りを目標にしたい。
【三】
概ねよく出来ていたが、完答できた受験生は少なかった。紅潮、沿革、体裁の誤りが散見された。

国語3次 正答率・講評

問題 正答率(%)
受験者 合格者
完全 部分 完全 部分
【一】 問一 46.7 46.4 53.5 41.6
問二 47.4 0.0 55.4 0.0
問三 76.3 0.0 91.1 0.0
問四 10.2 35.4 18.8 37.6
問五 78.1 0.0 87.1 0.0
問六 57.3 38.0 62.4 35.6
問七 51.8 0.0 59.4 0.0
問八 74.5 0.0 82.2 0.0
問九 42.0 47.4 50.5 41.6
問十 0.7 58.0 2.0 74.3
問十一 0.0 42.7 0.0 50.5
【二】 問一 12.4 81.8 13.9 86.1
問二 69.3 0.0 77.2 0.0
問三 78.1 0.0 88.1 0.0
問四 28.1 66.4 44.6 54.5
問五 1.1 83.2 1.0 88.1
問六 24.5 27.7 34.7 25.7
問七 6.2 29.2 9.9 40.6
問八 70.4 0.0 80.2 0.0
問九 56.2 0.0 70.3 0.0
【三】 漢字 41.6 58.0 56.4 43.6
【一】
本文は乙一の短編「陽だまりの詩」『ZOO 1』(集英社文庫)によった。
人間の死滅した世界に生きる「彼」と、「彼」を看取るべく作られたロボットの「私」。「彼」の死という絶対的な別れが約束された関係の中で、「私」の内面は少しずつ人間的な感情を宿していく。
「私」という一人称視点の小説であることに加えて、「私」がロボットであるため、もう一人の登場人物「彼」は、理解することが困難な他者として立ち現れる。であればこそ、「私」に与えられる課題は、「彼」の遺志を理解することとなるし、設問もまた、おのずから「彼」の視点に立って考える問いとなる(問四・九・十・十一)。
作品構造としては、「彼」が伯父を看取ったという過去が、未来において「私」が「彼」を看取るという形で反復される。であればこそ、伯父の死に向けられた「彼」の思いが、「私」への願いにどのように反映されているかを考えることが重要となる。その第一段階が問十だ。この設問では、伯父と「彼」の二つの死が、「彼」自身にとってどのような意味を持つのかを問うている。共に、死を他者や世界との断絶として捉えられれば、解答できたかと思われる。(「どのような意味を持っていますか」という設問に対して、「気持ち」を解答してきた者が多かったのは残念であった。この両者の違いは大きい。)
第二段階が問十一である。ここでは、伯父の死に際して「彼」が感じたことを基盤とし、「人間の『死』を看取る」ことの意味を考えなくてはならない。死がつながりを喪失させるものだとすれば、そのつながりを維持し続けようとすることが「彼」の願いとなるはずだ。事実、死んだはずの伯父が「彼」の中で生き続けていることは重要なヒントとなる。
今回の作品のテーマは「死」という重いものであったが、それは決して「怖い」とか「いやだ」といった感情的な反応によって思考停止してはならない事象である。とりわけ、命が無常に、時として非情に失われる現実を情報として消費し続ける我々は、それを深く考えないことによって、日常空間の「平和」を偽装しようとする。しかし、そのような思考態度は、もはや何の安心ももたらしてはくれないことを了解しなくてはならない。
【二】
出典の『感性の窓を開けて』は、日々のできごとを全感覚で捉え、既成概念にとらわれない感じ方を探る、という趣旨で書かれた短編集である。本文は「土」について考察した文章の後半。「土」のイメージがもつ両義性、「土」から遠ざかってしまった文明社会や大人についての批判が記されている。批判と言っても、作者自身も含めた大人のもつ哀しさや大人に対する同情をもそこはかとなく感じさせる。作者の増成隆士氏はマグリットの絵画をモチーフにし哲学的な考察を加えた『思考の死角を見る』で、サントリー学芸賞を受賞している。
大問【二】の平均は、46点満点中24.0点と、52%の正答率だった。問一、二、三の語句の問題は例年通りの良いできだった。問四、五の論述問題は、部分点を含めるとまずまずのできである。問五の傍線部にある「アンビヴァレントな」という言葉は小学生には難しいものだが、注にある「同じ一つのものに対して相反する感情を同時にもつような」から、二つの相反する内容が求められていることに気づいてほしかった。問六では「対になる二つの要素に着目して」という条件を満たして理由説明をすることが難しかったようである。問八、九の説明問題は、それぞれ選択肢が三行あり、読み取るのに時間がかかると思われたが、まずまずのできであった。特に問九では「おとなたち」の心情を読み取る必要があったので、やや難の問題である。合格者の正答率と受験者の正答率の差が見られた問いであった。
【三】
全問正解の率にとらわれず全体的に見ればできがよく、基礎的な学習事項にしっかりと取り組んできたことが伝わってきた。漢字の問題は単なる暗記の問題ではなく、語彙力にも影響されるものである。⑤の正解は「帰省」であり、「規制」や「寄生」では文意としてふさわしくない。部分的な間違いが多かったのは②と⑥であった。②は「往」の字を「住」とした者が多く、⑥は「博」の「、」が抜けている者が多かった。また①では「奮起」を「奮気」と答えた者が多くいた。それ以外では③において「任」という誤解答が目立った。