入試講評

平成25年度 中学入試講評

国語

国語1次 正答率・講評

問題 正答率(%)
受験者 合格者
完全 部分 完全 部分
【一】 問一 26.2 69.4 39.3 56.2
問二 50.5 0.0 62.9 0.0
問三 59.8 0.0 69.7 0.0
問四 54.9 1.3 71.9 0.0
問五 45.1 0.0 56.2 0.0
問六 2.5 22.4 3.4 23.6
問七 70.3 0.0 87.6 0.0
問八 2.2 30.4 2.2 42.7
問九 0.3 48.3 1.1 67.4
【二】 問一 16.1 81.7 23.6 76.4
問二 10.4 65.0 13.5 61.8
問三 2.5 90.5 6.7 89.9
問四 24.3 0.0 36.0 0.0
問五 58.0 0.0 71.9 0.0
問六 51.4 0.0 66.3 0.0
問七 1.9 66.9 2.2 73.0
問八 34.7 0.0 48.3 0.0
問九 1.3 17.4 4.5 21.3
【三】 漢字 4.7 95.0 7.9 92.1
【一】
本文はウィリアム・フォークナー『熊』(加島祥造訳、岩波文庫)に拠った。大熊に出会うために、銃を持たずに森の奥へ踏み込んでいった少年が、狩人として の傲りを捨てて、やがて大熊に出会うまでの経過が語られた部分の抜粋である。今回の問題文は、翻訳調の文章に加え、少年が回想を交えながら内省を深めてい く様子が主に描かれており、他者とのやりとりを描いた物語になじんでいた受験生は読解にやや手こずったようである。
少年が人間社会において身につけた風習や文明の利器を捨て去って、自然に受け入れられようとしていることを把握し、文明/自然の対比を読み取ることができ たかどうかで大きく差がついた。問九は、この作品における大熊の存在を、少年の生きてきた世界との対比で説明する問題であったが、「少年にとって大熊はど のような存在か」という視点から説明をした答案がほとんどであった。主人公に引きつけて読むことだけではなく、作品の構造を俯瞰的に見る視点を養ってほし い。問六の記述問題は少年の「決心」の内容を問うものであったが、時計と磁石といった道具がなぜ「汚れ」として捉えられているのかを理解できていないと完 答は難しかったと思われる。背景にあるのは、むろん上述の文明/自然の二項対立である。いずれの設問も、本文に根拠をおきつつ類推する力が問われており、 しっかりと情報を整理しながら読解をする習慣が身についているかどうかがポイントである。
【二】
美学についての文章。鎧兜に美を見出し美しく飾った時代と、物質そのものに価値を置く現代との精神性の違いについて論じられている。物質と精神の二項対立。精神の背後に神の領域が存在していること。この二点が読み取れているかがポイント。
【一】 に時間をかけて、【二】の問六くらいまでしか手がつけられていない答案が見られた。問三、七、九が発展的につながっていることに気づくと解答しやすかった と思われる。全体のまとめとして問九の論述をみると、受験生の本文理解の程度が窺われた。「鎧兜が美しい時代は、なぜ命が重い時代なのか。」という趣旨の 問いである。「鎧兜の美が命を守ったから。」というところで留まってしまったものが多かったが、なぜ美が命を守ったのかまで言及しているものは少なかっ た。「人間存在に対する尊厳」「神の領域」といった視点から論じる必要があった。
【三】
①「賃貸」・②「徒党」・⑦「白昼」の3問は正答率が低かった。特に、「徒党」「白昼」については、漢字そのものを書けないというよりは、言葉として知らないと思われる解答が目立った。漢字力・語彙力ともに力を上げて受験に臨んで欲しい。

国語2次 正答率・講評

問題 正答率(%)
受験者 合格者
完全 部分 完全 部分
【一】 問一 57.1 0.0 60.0 0.0
問二 6.8 76.1 9.5 78.6
問三 23.0 0.0 27.1 0.0
問四 52.7 44.1 61.4 36.9
問五 77.0 0.0 82.0 0.0
問六 16.5 50.6 24.1 56.3
問七 79.9 0.0 85.4 0.0
問八 1 51.7 46.3 57.3 42.0
問八 2 0.1 39.8 0.0 50.8
【二】 問一 43.2 42.5 53.2 38.0
問二 92.5 7.5 94.9 5.1
問三 67.5 0.0 77.6 0.0
問四 44.4 0.0 50.2 0.0
問五 4.1 24.6 4.4 25.8
問六 1 87.8 0.0 93.2 0.0
問六 2 29.9 5.8 42.4 7.8
問七 48.5 0.0 56.9 0.0
問八 0.0 33.2 0.0 40.7
【三】 漢字 47.9 51.9 64.7 35.3
【一】
本文はアントニオ・タブッキの短編「元気で」(訳=和田忠彦 『ユリイカ2012年6月号』青土社 所収)によった。
イタリアのある駅で出会った「男」と「少年」。一緒に旅に出るはずだった妻を失った「男」と、世界を旅することを夢見ながらも、貧しい家を支えるために駅でアイスクリームを売らなくてはならない「少年」が、同じ名前であることをきっかけに交流し、新しい人生の可能性に至る物語である。
「少年」の視点に立って読んだ受験生が多かったと思うが、設問では、「男」の視点からも状況を考察することを要求した(問四・七)。また、問八 2 では「少年」のその後についての妥当な解釈を要求したが、「男」から「少年」へと受け継がれるものを無視してしまっては、解答することができない。
この作品を表層的にとらえれば、「男」と「少年」を〈師弟関係〉や〈(擬似的な)父子関係〉と見なして、「男」が「少年」の成長を促す物語であると解釈することも不可能ではない。しかし、先にも書いたとおり、「男」には大きな挫折が存在しているため、「少年」の単なる導き手としてはふるまうことができない。加えて、二人が同名であることを考慮すると、両者に共通する「旅」という要素が重要な意味を持つことが分かる。
(「同名」=「同一」と捉えた解釈が散見されたが、「同名」というだけで全てが「同一」であると解釈するのは妥当性を欠く。)
このような、本文そのものを丁寧に読み込むことで導き出される解釈は、全て受験生の手に委ねられているわけではない。設問を順に正しく読み解いていけば、出題者の手引きによって一つの解釈に至ることができるようになっている。
例えば、問六において「絵はがき」の象徴性について理解することは、問八 2 で「少年」のその後を考える上で必須の要件となっている。にもかかわらず、双方の問いを結びつけて考えられていない受験生が少なからずいた。
使い慣れた解釈の枠に無理やり押し込めるのではなく、設問を通じて作品にアプローチしていくという意識を強く持ってもらいたい。出題者は決して敵ではない。対話すべき導き手である。
【二】
本文は畑山博『教師宮沢賢治のしごと』によった。
宮沢賢治の教師時代について、当時生徒だった人々の証言をもとに紹介しながら授業を再現し、宮沢賢治の人物に迫る内容の文章である。本文は第三章「再現 代数の授業」の全文である。本文を通して、授業における抽象化の作業、教師としての宮沢賢治が目指した授業、この二つについて正確に把握することが必要である。
語句の問題に関しては、単なる知識問題と捉えてしまっている受験生が多いようである。言葉そのものを知らなくても、その言葉が文中でどのように使われているかをよく確認すれば、正解にたどり着くことは容易なはずである。
指示語の問題を含め、指示内容を確認しつつ正解に近づいてゆく設問が多いが、全体的に指示内容を適切に把握できている受験生が少なかったように感じた。
最後の設問で問われている「もっと根本的なこと」というのは、本文における根拠としては傍線部の後、具体的に授業について書かれている部分に記されている。記述解答全般について言えることだが、せっかくポイントが捉えられているのに、文として成立していないものや主述関係が違ってしまっているような勿体無い解答も多くあった。自分が仕上げた解答が文として適切かどうかも確認することも大切なことである。記述問題の多くは理解の深度を問うものなので、正確に自分の理解を表現するように心掛けて欲しい。
【三】
全体として良くできていた。特に②「専門」、④「節約」の正答率は高かった。①「仲裁」の「仲」を「中」「忠」としたものが若干見られた。③「養蚕」は「養産」「蚕産」といった誤答が目立った。

国語3次 正答率・講評

問題 正答率(%)
受験者 合格者
完全 部分 完全 部分
【一】 問一 33.9 46.4 39.6 44.8
問二 82.2 16.2 89.6 9.4
問三 29.8 38.8 49.0 27.1
問四 56.6 0.0 75.0 0.0
問五 43.6 1.2 58.3 1.0
問六 6.7 45.7 10.4 43.8
問七 19.6 63.0 22.9 64.6
問八 4.8 44.6 10.4 43.8
問九 27.9 58.2 22.9 64.6
問十 70.4 0.0 81.3 0.0
【二】 問一 25.9 46.4 30.2 50.0
問二 27.5 71.8 42.7 57.3
問三 30.0 47.8 32.3 55.2
問四 47.6 0.0 50.0 0.0
問五 57.7 0.0 69.8 0.0
問六 1.4 8.1 2.1 16.7
問七 43.9 0.0 58.3 0.0
問八 0.0 23.1 0.0 35.4
問九 43.4 0.0 55.2 0.0
【三】 漢字 7.2 92.6 11.5 88.5
【一】
本文は、大崎善生の『聖の青春』に拠った。羽生善治らと同世代で、29歳の若さで早逝した鬼才棋士、村山聖の一生を描いた作品である。出題箇所は村山が腎臓病に苦しみながらも、奨励会(プロ棋士になるための予備的な組織)に合格し、師匠である森と食事をする場面である。
問一の空欄補充はXの方が難しかったようだ。その後に「うなる」とあるので、「うんうん」が正解。慣用句的な言い回しには慣れておく必要がある。問三、村山が森にカレーを勧めるときの心情を問う問題。カレーが文字通り絵の具で出来ているという内容の解答が見られたが、ここはあくまでも村山の冗談めかした言い方、比喩表現であることに注意しよう。問六の心情記述問題。合格を素直に喜べない中での食事という場面設定なのだが、悔しさや苦悩が喜びに勝っているという複雑な心情を捉えるのが難しかったようだ。〔Ⅰ〕に引っ張られたのか、食事についてしか言及していない解答も多く見られた。問七、問九は二つ目の答えを選べたかがポイント。問八、村山と森の「心の風景が似ている」とはどういうことかを説明する問題。文章中の具体例が挙げられていなかったり、逆にまとめの言葉が抜けているなど、問題の指定に沿っていない解答が見られた。
試験対策であるが、「何を問われているのか?」を明確に把握した上で解答の根拠となるポイントを探すことが大切。特に傍線部の直前・直後だけでなく、全体を俯瞰した上で解答を作成する力が求められる。
【二】
本文は、宮城県美術館で長年美術教育に携わってきた学芸員で、自身立体造形作家でもある齋正弘氏が、小中学生向けに美術の楽しみ方について書いた文章である。
まず、この文章がどのような立場から書かれているか、考えておく必要がある。一般的に、美術は作者の知識や美術史における位置づけなど、〈知る=分かる〉ことに重点が置かれがちであるが、「作者の想いなんか知ったこっちゃない!」(傍線②)という表現や「本当の『鑑賞』」という言葉に明らかなように、筆者の立場は異なる。どのような点で異なっているのか、その根拠は何か、ということを考えて、本文全体の構造を捉えなければならない。試験で出題される説明的文章の多くが、今回の本文のように、一般的・常識的な理解を乗り越えて新たな知のあり方を模索しようという立場で書かれている。だからこそ、受験生に読んでもらいたいと判断され、選ばれた文章である。
問四以降の読解問題では、そのような本文の前提となる理解と本文全体の論理構造を問う出題であった。特に問六および問八の記述説明問題では、傍線の直前部分のみに基づく答案がほとんどであり、そのうえ本文の前提を理解し損ねていたため、正答率が低かった。
【三】
全体的によくできていたが、完答できた受験生は少なかった。特に④「管制」は、同音多義語が多く存在するので、誤答が顕著だった。⑤「障る」も意味を取り違え、「触る」とした解答が多く見受けられた。漢字は意味と合わせて学習してほしい。